『オレは普通だ』
オレは、たぶん正統派だと思う。
変な関西弁をしゃべるダテ眼鏡ヤローに比べりゃ激まともなはずだ。
寝てたと思ったら覚醒しやがるヤローと違って常に正常だし。
異常に飛び跳ねたりもしねぇ。
てゆーか、オレは普通だ。
普通なんだっ!!
男にドキドキするなんて激ダサだぜ!!
だから・・・これは・・・たぶん、アレだ、アレ!!!
何か違うコトにドキドキしてんだよ!!!
こんな・・・・こんな男にドキドキしてるんじゃないっ!!!
もしかしたら、オレ、不治の病かもしんねぇ・・・・
ちくしょ〜〜〜〜。激ダサだぜ。
「宍戸」
「な、なんだよ!!」
うっわー、声が上ずっちまったよ・・・・
てゆーか、急に話しかけてくんなっ!!ビビっちまっただろーが!!!
ったく。こんな朝早くから部室でコイツに会うなんてな・・・・
オレに話しかけた男――――跡部が優雅に前髪をかき上げる。
ドキ―ン。
い、色っぽい・・・!!!
・・・って、違うだろ!!!
何が色っぽいんだ、何が!!!
「そこはオレ様のロッカーだって分かってんのか?あーん?」
ドキドキ―ン。
流し目がたまらんっ!!!
って、そうじゃないだろー!!
「たまらん」て何だ、「たまらん」て!?
「わ、悪かったよ・・・・」
言って、オレはヤツのロッカー前から立ち退く。
あぁ、またしても優雅にため息なんかつきやがって・・・・
げ、激可愛いぜ、ちくしょう・・・・
って、そうじゃないっ!!!
そうじゃないぞ、オレ!!!!
「ファイト、オレ。落ち着け、オレ・・・・」
「・・・・何ブツブツ言ってやがんだよ・・・・・」
右目下の泣き黒子が特徴的な跡部は、呆れ顔でオレを見つめてきた。
ドキドキドキ―ン!!!
そんな潤んだ瞳でオレを見つめんじゃねぇっ!!!
欲情しちまうじゃねーかよ!!!
・・・って、何に欲情するんだよー!?
てゆーか、欲情って何だ〜〜〜〜!!!(パニック)
「おい、宍戸」
「な、何だよ!?」
「てめー、今日は家に帰れ」
「あ?」
「家に帰れ」
・・・・なんで、オレが家に帰んなきゃなんねーんだよ。
そんなの激ダサもいいとこだろーが。
「オレは部活やるために部室に来てんだよ」
くそ〜〜、睨んできやがって・・・・
オレは負けねぇ!!誘惑なんかにゃ負けねーぞ!!!
誘惑できるもんならしてみろ、跡部!!!
見事に誘惑されてやらぁっ!!!
・・・って、誘惑されたらダメだろ、オレ!!!
しっかりしろ!!!
落ち着くんだ、オレ〜〜〜〜!!!!
「・・・・いや、その格好じゃテニスできねーだろ・・・・」
「・・・・は?」
・・・・・・・・間。
なんじゃこりゃあぁぁぁっ!?
ガビ――――ン!!!
「なんでオレ、パジャマ着てんだ!?」
「んなコト、オレ様が知るか」
落ち着け、落ち着くんだ、亮!!!
こんな朝早くからパジャマで部室にいるってどーゆーコトだ!!??
さっぱり分からん!!!
オレは一体何考えてんだ!?
「・・・・朝錬に顔出したかと思えば・・・・・てめー、テニス舐めてんのか?」
・・・・ハッ。
や、やべぇ。跡部がキレてやがる・・・・
「な、舐めてなんかねーよ!!寧ろ、跡部を舐めた・・・!?」
ストップ!!ストップ!!スト―――ップ!!!
オレ、今何言おうとした!?
いやいやいやいやいや、今の、激ヤバ発言だろ!?
何だ、今の!?
「・・・・とにかく、てめーは家に帰って出直して来い」
あぁっ!!跡部がマジで呆れてやがる!!
オレ、ホント激ダサだな。
・・・・・あ、ヤバイ。
ちょっと泣きそう。
「・・・・・・・・・オレ、ちょっと家帰るわ・・・・・・」
「・・・・そうしろ」
オレは跡部を部室に残し、ふらふらしながら部室のドアを閉めた。
ふと、
目の前にあのダテ眼鏡ヤローが立っていた。
「忍足・・・・」
跡部がいるトコ、必ずいやがるな、コイツ・・・・
「宍戸・・・・」
「な、何だよ・・・・・」
オレ、ちょっと泣きそうだから、そっとしておいてほしいのに・・・・
忍足がゆっくりとオレに近付いた。
そして肩を「ぽんっ」と叩き、
「安心しぃや。自分も十分変態やから」
・・・・・・・間。
え。
オレ、普通じゃないの!?
ガビ―――ン
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