「・・・・・・・・・ココは何処だ・・・・?」


跡部の発した一言が、部員達全員に困惑をもたらした。













『LOST MEMORY』









「・・・・・ぶ、部長。自分の名前、分かりますか・・・・・?」


そう跡部に言ったのは鳳であった。

部員達の目が一斉にコートに座り込む跡部へと向けられた。

眉をひそめた跡部は周囲をぐるりと見渡してから一言。


「・・・・・・お前ら、誰ダ?」





・・・・・・・・・・間。





「わ――っ!!オレのせいですっ!オレのせいですっ!!すいませんっ!!」


「がんがらがっしゃん!!」と物凄い音を立ててラケットを落とした鳳は

これでもかという位に跡部に土下座した。

忍足がまじまじと跡部を見つめて「ポツリ」と言った。


「・・・・・こら、アカン。記憶喪失っちゅーヤツやな、たぶん・・・・・」







事の発端はほんの少し前。



いつものように練習をしていた氷帝テニス部部員。

しかし、宍戸が跡部にちょっかいを出していたのがいけなかった。

氷帝テニス部部長・跡部景吾は氷帝のアイドル・・・・・

いや、女王である。

その女王にあのアホちん宍戸が「かまってvかまってv」とまとわり憑く姿が

傍目から見て他部員達の反感を買った。

勿論アホの宍戸を相手にすることはない女王だが、

それでもやはり他部員達的には「宍戸抹殺」のオーラが沸々と出ていた。

そんな光景を遠くから真っ黒オーラで見つめていた鳳。

何を思ったのか、深く深呼吸をした鳳は宍戸へと目標を定めて

「一球入魂!!」してしまったのだ。

その魔球はこの世には有り得ないほどの回転とスピードと威力があった。



上手く宍戸に当たればよかった。

いや、いつもならば汚れキャラ担当の宍戸に当たっている・・・・・はずっだった。

今回に限ってまたしてもノーコンだった。

無駄に殺意が入っていた分ミスしてしまったのだ。

この恐るべき魔球は宍戸の右頬をかすめていき


それはもうド真ん中ストレートに

「ギュルルルル」という爆音を発しながら

ジャストミートしてしまったのだ。



跡部の後頭部に。




跡部は宙を舞った。



瞬間、部員達は皆頭の中が真っ白になった。



眼前を半回転しながら

弧を描いて綺麗に吹っ飛んで行く跡部。



「ズザザザ―ッ」という音と共に砂煙をあげて

地面に叩きつけられる跡部を

それはもう目で追うことしか出来なかった。



「ハッ」と我に返った時には、跡部は数メートル向こうに転がっていた。

まるでボロ雑巾のように。







「すいません!!ホントにすいません!!部長に当てるつもりはなかったんですー!!!」


泣きの入った鳳が必死に弁解する。


「宍戸さんに痛い目に遭ってもらいたかっただけなんですっ!!」


「オレかよっ!!」


宍戸、すかさずツッコミ。

忍足も深々とため息をついた。


「宍戸が避けへんかったら、こんなコトになれへんかったのに・・・」


「オレかよっ!?」


困惑している跡部の頭を撫でるジロー。


「あとべー。宍戸はどーでもいいけど、オレのコトも忘れちゃったの〜?」


「オレはどーでもいいのかよ!!」


跡部は申し訳なさそうに俯いて「ポツリ」と呟いた。


「・・・・・・・・ごめん」


「「「「「 !!!!! 」」」」」



あの跡部が・・・・・・・


我らのアイドル・跡部景吾が・・・・・・・・


オレらに謝ってる!!!

ドキ―――ン


落ち着け、変態氷帝テニス部。



忍足、鳳、ジロー、宍戸、それに岳人がお互いにアイコンタクト。


「・・・・・・今の跡部にはオレ達の記憶が無い・・・・・・」



五人が「ごくり」と唾を飲み込んだ。



「・・・・・・・・・・つ、つまり・・・・・・・・・・」



これは自分を売り込むチャンス!!!

キュピ―――ン!!!


腐ってますな、正レギュラー。


先手必勝。

真っ先に動いたのはジローだった。


「あとべー。オレはね、跡部の恋人のジローだよーvvv」





・・・・・・・・間。





「「「「 はぁ!? 」」」」


「む・・・・・そ、そうなのか?オレの恋人なのか・・・?」


戸惑いながら跡部は「じっ」とジローを見つめる。


「んな嘘付くな、ジロー!!お前卑怯やぞっ!!!」


忍足がジローに詰め寄ると、ジローは「ニヤリ」と笑った。


「言ったモン勝ちじゃない?こんなのさー」


・・・・・・・・黒っ!!黒いぞ、ジロー!!!


「えへへ〜♪」と笑いながら跡部に抱きつくジロー。

そこへ割って入って行く忍足。


「跡部にくっつくな!!オレなんて旦那さんやぞっ!!」





・・・・・・・間。





「「「はぁぁぁ!!??」」」


「・・・・お前、オレの旦那なのか・・・・?とゆーことは・・・・オレは妻・・・・」


「そやで〜vvオレらは皆が羨む新婚夫婦やねんでvvv」


「へらぁ」とだらしない笑みで答える忍足。

そしてジローを力任せに引っぺがして跡部を抱きしめる。

鼻血をだらだらと流しているコトには敢えて触れまい。


「卑怯〜〜!!忍足卑怯〜〜!!くそくそ・・・じゃあ、オレおやつ係っ!!」


岳人がぴょんぴょん跳ねながら言った。

落ち着け、岳人。いちいち飛び跳ねるな。

更に鳳も口を開いた。


「待って下さい・・・・」


「「「「 !!! 」」」」


鳳が禍々しいどす黒いオーラを放って跡部の前に立つ。


「な、何やの!?旦那の権利は譲らんでっ!!!」


「恋人の権利だって、もーオレのモンだCー」


「はい!はい!はい!おやつ係はオレだぞ、オレ!!」


口々に訳の分からないコトをほざく氷帝のアホ正レギュラー達。

ジローと忍足に抱きつかれ、途方に暮れる跡部。

鳳はそんな跡部を「じっ」と見つめて一言。


「オレは跡部さんの不倫相手です」





・・・・・・・間。





そ―きたか―――っ!!!

ピシャ―――ン!!!



「ふ、不倫!?オレは不倫もしてるのかっ!?」


真に受けないで下さい、跡部さん。

跡部は困惑した。

一度に有り得ない設定で自己紹介されればそりゃ困惑もします。

そうして鳳はこん身の力で忍足とジローを跳ね除け、跡部を背後から抱きすくめた。


「・・・なっ!!」


跡部は微かに体を震わした。

そんな様子に「クスッ」と笑って鳳が耳元で囁く。


「跡部さんは本当に可愛い人ですね・・・・vv」


「あー!!ずるーい!!オレの必達技使わないでよー!!」


ジローが抗議の声を上げた。

ジロー君、必殺技って何ですか?


「オレの可愛い奥さん、口説くなー!!!」


変態忍足が声を張り上げた。

とりあえず鼻血をどうにかしろ、忍足。

「ぎゃーぎゃー」と跡部の周囲で取っ組み合うアホ正レギュラー達。

見るに耐えません。

そして最後(?)の一人、宍戸が「ふふふ・・・・」と不敵な笑みを零した。

それに気付いた鳳が冷めた視線を宍戸に向けた。


「・・・・宍戸さん、貴方にはもうオイシー役は残ってませんよ?」


「フンッ」と鼻を鳴らす鳳。

純真無垢な鳳は何処へ行った?


「はーはははは!!この時を・・・この時をオレは待ってたんだっ!!!」


大声で喜ぶ宍戸。


「これでオレを散々バカにしてきた跡部に復習できるっ!!!」


「・・・・・・復習じゃなくて復讐でしょ、宍戸さん」


ナイスツッコミ、鳳。


「う、五月蝿ぇ!!いいか、跡部、よく聞けよ!!!」


そして「ビシッ」と跡部を指差して堂々と声高々に宍戸は言った。


「オレは貴様のご主人様だっ!!!」






・・・・・・・・・間。





その設定もアリか―――っ!!!

ピシャ―――ン!!!


「ご、ご主人様だと・・・!?」


そんな簡単に信じないで下さい、跡部さん。


「そーだ!!お前はオレの下僕だっ!!!」


「はーははは!!」と高らかに笑って威張る宍戸。

なんてアホな集団、氷帝正レギュラー達。

嘘で固められた自己紹介に、跡部はただただ呆然とした。

はてさて、記憶喪失の跡部の今後の人生やいかにっ!?













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