『LOST MEMORY』










音楽室を出て廊下を歩き始めた途端、忍足は深くため息をついた。


「ほんま、あの顧問には言い訳通用せえへんわ・・・・」


「こんな所で足止めされるとは思いませんでしたね」


鳳も忍足に賛同した。


「てゆーかさー、オレ、全然関係無いCー」


ジローが忍足と鳳を「ジロリ」と睨み付ける。


「跡部に二度目の一球入魂したのは鳳じゃん?なんでオレまで呼ばれるわけ?」


「ジローを野放しにしとったら危ないからや」


「何が危ないわけ?病室で跡部に添い寝してあげたかったのにー」


「「 そーゆー考えが危ないんだっつの 」」


忍足と鳳、ナイスツッコミ。


「寧ろオレが介抱しますよ。オレがぶつけちゃったんだし・・・・」


「鳳一人に任せるんも危ないっちゅーねん」


「何がです?オレは手取り足取り腰取り部長にご奉仕するだけですよ?」


「「 絶対やらせねぇ 」」


鳳君、さらっと凄いコト言いのけました。

間髪入れずに切り替えした忍足とジローも強者です。


「でもですね、オレ、本当にワザとじゃないんですよ?

 忍足先輩があまりにも部長にちょっかい出すもんだから・・・・・」


「・・・・・鳳。お前、オレ狙ってたんか」


鳳の一言に血の気が引く忍足。

鳳がノーコンで助かりましたね、忍足君。


「だったら余計にオレは無関係じゃんっ!!

 オレまで説教されて・・・・何かすっげー損した気分」


ジローが不貞腐れたようにぼやいた。


「オレ達のことより、跡部の方が心配や」


「確かに・・・・二回目も思いっきり入っちゃいましたからね」


鳳君。アンタ、跡部を殺す気ですか?


「ホンマやで。人形みたいに吹っ飛んだもんなぁ・・・・」


忍足君、遠い所を見て言わないで下さい。


「忍足のせいで跡部が馬鹿になっちゃったらどうしよう・・・・

 もう跡部に近付かないでよねっ!!」


ジローの抗議に、忍足はため息をついた。


「オレより鳳の方が危険やろ、どー考えても」


確かに。


「芥川先輩も部長には近付かないで下さいよ?」


「なんでそんなコト、鳳に言われなきゃなんないの?」


「・・・・オレ、何するか分かりませんよ?」


鳳の目が「ギラリ」と光った。

何をする気だ、鳳。


「前々から思ってたんだけどさー・・・・鳳って生意気だよね


ジローの目も鋭く光った。


「跡部に手出したら・・・・オレ、許さないC?


言葉にがこもってますよ、ジロー君。


「てゆーか、オレ、跡部の恋人だCー」


「・・・・それ言うたら、オレかてけえちゃんの旦那やぞ?」


「オレは不倫相手ですけど」


「「「 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 」」」


三人の周囲を邪悪な威圧感が漂う。


「・・・・そろそろ決着つけようやないか」


忍足が冷たく言い放った。


「記憶喪失の跡部部長は、オレが必ず幸せにしてみますよ」


「鳳に任せたら跡部の頭の形が変形しちゃうからダメ」


ジロー君、ナイスツッコミです。


「見つけたぞ、お前らぁっ!!!」


「「「 !!! 」」」


方向のおかしい言い争いをしていた三人へ、殺意のこもった声がかけられた。

振り向いた先には、得体の知れない息を吐いている跡部

その跡部の背後にボールを大量に持つ岳人、ラケットを持つ樺地の姿が。


「跡部!!病院は!?もう退院してきたの!?」


ジローが驚いて跡部を見つめた。


「部長!!歩いて平気なんですか?頭の方、大丈夫ですか!?」


いろんな意味で頭の方は大丈夫じゃないと思いますよ、鳳君。


「無理したアカンで、けえごv今からオレが介抱したるからな♪」


「あ、ダメ!!オレが面倒見るのー!!」


「オレが介抱しますっ!!!」


「黙れ、貴様ら」


跡部様、言葉遣いが乱暴ですよ。


「け、景吾、どないしてん?そんなコト言うて・・・・」


「呼び捨てすんな。気持ち悪ぃ」


跡部の禍々しいオーラに、不安になる忍足。

跡部の背後で岳人が「ニヤリ」と笑う。


「跡部の記憶がさ、二回目の一球入魂で戻ったんだ」


「・・・・ま、そーゆーことだ。」


「「「 ・・・・・・えっ!? 」」」


三人とも、ナイス驚き具合。

目をパチクリさせている三人の前で、跡部様が優雅にため息をお付きになりました。


「記憶喪失中のオレ様を随分と面倒見てくれたみてーじゃねーの。なぁ、樺地?」


「・・・・・ウス」


跡部様の言葉に感謝の念が無いのは何故だろう。

三人からは嫌な汗が出始めた。


「あ、跡部。オレは別に何もしてへんで、ホンマ」


「オ、オレだって抱きついたくらいだC〜」


「オレも部長を怒らすようなコトは何も・・・・」


今更何慌て出しているんだ、この三人は。


「・・・・樺地」


跡部が「パチン」と指を鳴らした。

樺地はその合図と共に、三人の前にまっピンクの日記を取り出して見せた。


「「「 そ、それは・・・・!? 」」」


「オレ様が記憶喪失中につけていた日記だ」


「「「 日記ぃぃぃ!? 」」」


「お前らがオレ様にしてくれたあーんなコトやそーんなコトが書かれている日記だ」


見る見るうちに青くなる三人。


「言い逃れはできねーぜ?」


跡部が見下したような冷たい目で三人を凝視した。

絶体絶命大ピンチ。


「オレ様は礼を重んじるタイプだからな。

 オレ様直々にお前らに礼をしに来た


目が光ってます、跡部様。

樺地からゆっくりとラケットが跡部に手渡される。

岳人も素早くボールを跡部に差し出した。


「ちょ、ちょー待ち。そんな感謝されるようなコトしてへんで」


後ずさる忍足。


「ぶ、部長!!病み上がりで運動はどうかと・・・・・」


鳳も後退を始める。


「お礼なら、苺ポッキーの方がEー」


ここはボケるトコじゃないよ、ジロー君。


「遠慮するなよ」


怖い・・・怖いです、跡部さん!!


「ちょ・・・・待った!!跡部、ここは話し合いで・・・・・」


「問答無用」


跡部が構える。


「破滅へのロンド・乱れ打ち!!!」


「「「 ぎゃーーーーー!!!! 」」」












テニスコートが夕焼け色に染まる中、

今日も今日とて昨日と同じく宍戸は跡部に声をかけた。


「おーい、跡部!!今日も帰りは待ってろよっ」


「あぁ?」


跡部が宍戸を「ギロリ」と睨んだ。


「な・・・・おま・・・・ご主人様に向かってそんな態度とっていいと思ってんのか!?」


跡部の殺気にたじろぐ宍戸。

それでも天性の性分なのか、それともただのアホなのか

よせばいいのに負けじと跡部を睨み返す。

そんな跡部と宍戸の睨み合いに終止符を打ったのは岳人であった。


「宍戸ー。跡部に逆らうのは止めとけよー」


「あぁ!?何言ってんだよ!!コイツはなー、このオレの・・・・」


「跡部、もう記憶戻ってるんだから」




「・・・・・・・は?」




「だから、記憶が戻ってるんだって。な、跡部?」


「・・・・あぁ」





・・・・・・・・・・間。





何だろう・・・・凄くやな予感。





「おい、宍戸」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい」


跡部がゆっくりと宍戸に近付き、肩に「ぽんっ」と手を置いた。


「誰が誰のご主人様だって?」


・・・・・・逆らったら、コ・ロ・サ・レ・ル。

宍戸、本能が働きました。


「跡部がオレのご主人様です」


そう言うや否や、宍戸は跡部様の前に這いつくばってひれ伏した。

哀れ、宍戸。

遂に下僕の地位にまで落ちたか。

宍戸の見事なまでの負け犬っぷりに、跡部は満足したような顔で「ニヤリ」と薄く笑った。


「よく分かってんじゃねーの。あぁん?」


あぁ、なんてご満悦なお顔をなさるのでしょう、跡部様は。


「おい、宍戸」


「はい、何でしょう?」


「今日から荷物持ちと雑用をやらせてやる。光栄に思え








それから、宍戸がこき使われる姿は氷帝テニス部の日常となってゆくのだった。

ちゃん♪ちゃん♪













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