ボクの隣りには いつもキミ




だけど  いつしか



キミの隣りには ボクじゃない誰か













『隣りには』









午後の風が優しく頬をなでる。

ゆったりとした太陽の陽射しが何だか暖かくてうとうととしてくる。


いい天気だなぁ・・・・・・・・・・・・


こんな陽気はいつも以上に眠気を誘う。

うつらうつら・・・・・と本格的に眠ろうとしたその時、

ふと窓の外を見知った人物が横切ったのが見えた。


「あっ・・・・・・・・・」


もう少しで眠ろうとしていたオレの意識が一瞬で目を覚ます。

そうして研ぎ澄まされた感覚全てが集中して来るのが分かる。

とろんとしていた瞼が開き、今遠くを横切った姿を追いかける。


・・・・・・・・・・・・・いた


目当ての人物の姿を見つけて、オレは心の中で微かに微笑む。


あんな所で何してるんだろ、跡部・・・・・・


憧れのあの子は頬を蒸気させて

木陰にもたれかかる誰かに話しかけているようだった。


・・・・・・・?誰と話してるんだろ・・・・?


ちょっと不思議に思ってよくよく目を凝らして見た。




・・・・・・・・・・おし・・・・たり・・・・



黒髪を掻き上げて、跡部の前で困ったように笑っていた。

きっとサボろうとしていた忍足を見つけて怒りに行ったに違いない。


「跡部は面倒見がいいからなー・・・・・・・」


ぽつりと呟いて「クスリ」と笑みがこぼれた。


オレもよくサボろうとして怒られて連れ戻されてたっけ。


我が身を振り返りつつ、怒った顔の跡部のことを思い出してみる。

自然、顔が緩んだ。

オレのことを怒っていた時と同じように、忍足にも説教しているんだろう。

そう思って何とはなしに眺めていたら


ふいに忍足が。



忍足の手が跡部を引き寄せた。



そうしてふわりと抱きしめたのが見えた。





なん・・・・・・・で・・・・・・・・・・・・・





握っていたペンを無意識の内に落としていた。

跡部は何回か忍足に抗議をしていたが、その内に諦めてしまった。

跡部の頬がほんのりとピンク色に染まっている。



跡部・・・・・・・嬉しそう・・・・・・・・・・



「ズキズキ」と胸が痛む。



忍足が幸せそうに微笑んで、

自分の腕の中にすっぽりおさまっている跡部の髪を優しく撫でた。



アレは友達としてのレベルじゃない・・・・・・・・・



一瞬でそう思った。




いつから?



いつから忍足はあそこまで来てたの?


あそこは・・・・・・跡部の隣りは、オレだけだと思ってたのに。




知らず知らずのうちに唇をキツくかみ締めていた。



ちっちゃい頃からそうだった。

オレはいつも跡部に抱きついて・・・・・・

勿論、跡部は怒るけど・・・・・・・・・・・・

でも、最後は困ったように笑って許してくれてた。



いつのまに、忍足にも許すようになったの?



「ズキズキ」と胸の痛みが増していく。



「・・・・・・・・ずるい」


オレはあそこまで行くのに何年もかけてきたのに。

オレが何年もかけて積み上げてきたコトを

どうして忍足はいとも簡単にやってしまうんだろう。


「・・・・・・・・ずるいよ」


そう呟いた自分の声が震えていた。

跡部が困ったような顔をして忍足を見上げた。

オレはそれ以上二人のことを見たくなくて、机の上に突っ伏すように顔を覆った。


「・・・・オレから跡部をとらないでよ・・・・・」


忍足があんなに跡部の近くに来てたなんて気付かなかった。

だって、まさか跡部が許すなんて思ってもみなかったから。



なのに・・・・・・・・・・



なのに、跡部は忍足が近付くことを許した。

跡部の隣りに忍足が来ることを許したんだ。



オレだけの場所だと思ってたのに。


オレだけが許された場所だと思っていたのに・・・・・。





いつか・・・・・・


いつか、オレが隣りにいることが許されなくなるのだろうか?


跡部の隣りが・・・・


あの場所が、オレじゃない誰かの為のトクベツの場所になってしまうのだろうか?




いやだよ、そんなの・・・・・・・



息が出来ないくらい苦しくなる。




「先生!!芥川が気分悪そうなんですけど・・・・」


オレの様子に気付いて、有り難いことに心配してくれるクラスメイト。


「芥川君、大丈夫?」


心配そうに別のクラスメイトが聞いてくれた。

オレはちょっとだけ笑って「平気」と返す。





いつか・・・・・・・


いつか、オレの隣りからいなくなってしまうのだろうか?


オレじゃない誰かの隣りに行ってしまうのだろうか?





オレは皮肉に笑って窓の外の空を見上げた。


「あーあ、なんでかなー・・・・・・」







ボクの隣りには キミ以外なら こんなにもいるのにね・・・・・・・・













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