『自分的跡部論』









神様ってのは理不尽だ。横暴だ。利己主義だ。身勝手だ。

「天は二物を与えない」なんて言葉があるけどよ。

ありゃぜってー嘘だな。うん。

なんでそう思うかって・・・・オレの知り合いにいるんだよ、そのパーフェクト人間がさ。

金持ちで、女にモテて、テニスやらせりゃめちゃめちゃうめーし。

そんで英語もペラペラだし?学園ナンバーワンとまで囁かれるお坊ちゃまで。

・・・・って、金持ちだからお坊ちゃまなのは当然か。

とにかく、だな。

勉強も運動もスタイルも、全部ずば抜けていいなんてさ。

有り得ない話だとオモイマセンカ?

・・・・・・・・興奮し過ぎて、ちょっと片言になっちまったよ。ちっ。

神様も、なんで一人の人間をこうまで贔屓しちまったんだかねー。

あの声、あの顔、あの仕草。そんでもってあの育ち。

あれは思春期真っ只中の悩める青少年からすれば喉から手が出るほど羨ましくて仕方ねぇ。

・・・・・あ、いや、別に怪しい意味じゃねーからなっ。勘違いすんなよっ!!

オレは別に跡部のことをだな。そんないやらしい目で見てるわけじゃ・・・・・

って、何言わせてるんだよっ!!!

つーか、なんでオレもちょっと焦ってんだよっ!!!

・・・・・・・ま、まあアレだな。

あの透き通るような瞳に見つめられて、平然としてられる人間がいたら見てみてーな。うん。




しかし、だ。

やはり神様もそこまでアイツを贔屓しなかったらしい。

人間としては究極で、且つ、絶対に欠けてはならないものが、アイツには備わっていなかった。

何かって?

性格だよっ!!!!

・・・・・あ、わりぃ。つい力入っちまった。

とにかくあの性格はヤバイ。つーか、ヤバイなんてレベルじゃねぇ。

小さい頃からちやほやされて育ったからか知らねーけどさ。

すっげー性格悪いの。超最悪。傲慢もいいとこでさー、ワガママで高飛車で自分勝手。

・・・・って、全部意味一緒か。まぁ、細かいトコは気にすんな。

自慢するわけじゃねーけど、オレ、馬鹿だからさ。

え?馬鹿は自慢じゃないって?・・・・・ほっとけ!!




オレのアイツへの第一印象はさー、

あの見かけに騙されて「可愛い」とか「綺麗な奴」とか思っちゃったわけよ。

真っ直ぐ綺麗な澄んだ瞳がオレをじっと見つめてきてさ。

見慣れない美人なんか目の前にしちゃったオレは、もー心臓バクバクで。

「えー!?どうしよー!?」って一人変に心の中ではしゃいでたんだよな。

なのに。あの野郎・・・・・・



「何ジロジロ人のこと見てやがんだ。殺すぞ」



第一声がこれってどーよ。

殺すって・・・・・初めて会う人間に向かって言う言葉じゃねーよな。

その時のオレは「えー・・・・・・(ガビーン)」って衝撃走っちゃってさ。

初めて目にする美人に言われた言葉が「殺すぞ」だぜ?

衝撃っちゅーか、ショックっちゅーか・・・・分かるだろ?

これはきっと幻聴だとか、耳悪くなったんかな?とか、思い込もうとしたわけよ。

現実逃避したくなる気持ち、分かってくれるだろ?分かってくれるよな?・・・・な?

ソイツの前で暫く放心状態になっちまったオレの姿もだいたい想像つくだろ?

なのにさー。



「凡人の分際でキモイんだよ」



第二声がこれですよ。

今度はキモイですか。そうですか。へぇ・・・・・・・・(ガビーン)

キモイなんて初めて言われたよ、そんな言葉。

オレってキモかったんだーってその時初めて知ったよ。

てゆーか凡人って・・・・いや、まあ天才だとは思ってなかったけどさ。

つーか、オレ馬鹿だからさ。凡人と言われればそれまでなんだよなー・・・・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



あぁ、ヤバイ。思い出したら凹んできた。

元気出せ、オレ。ファイトだ、オレ。

で、話を戻すとだな。

その時はもうすっげー凹んで、落ち込んでさー。

だって一気に「殺すぞ」と「キモイ」と「凡人」だぜ?

落ち込むだろ、フツーの人間なら。

オレは馬鹿だけどフツーの人間だから落ち込んだわけ。

もう死のうかなーぐらいに。いや、マジで。

今から思い直せば、なんであんな野郎に言われたぐらいで

オレが凹んで死を考えなきゃなんねーのか、腹立たしいけどな。




ここまで性格悪いのは稀だぜ、ホント。

ある意味希少価値だ、これは。

だがしかーし。神様はそれ以外はパーフェクトに与えちゃったもんだから、

他じゃ全然跡部に敵わないんだよな、オレ。

あ。勿論性格じゃ、オレの方が人徳あるけどな。

勉強でぼろ負けなのはまだ我慢できたんだ。納得できた。

何故ならオレは典型的な馬鹿だからなっ!!(えっへん)

けどさ。運動なら勝てると思ったのに。

テニスでぼろ負けした時は、流石に悔しいのなんのって。

納得いかなくってさ。

跡部のヤローに何度も挑戦したんだな、これが。

10試合くらいはした頃かな。

お互いもーヘロヘロ。結果は勿論オレが完敗。

はーあ。情けねーのなんのって・・・・もう・・・・・・。

そしたらアイツがさ。



「お前、根性だけはあるんだなっ」



って、そう言ってきたんだよ。オレに。

極上の笑顔向けて。

そん時かな。


あぁ、やっぱ可愛いじゃん、コイツ


って思っちまったのは。

いや、ホント可愛かったつーか、ドキッとしたっつーか。

性格悪ぃし口悪ぃけど、笑うとサイコー可愛いんだよな。

しかも嫌味無しでオレのこと褒めたんだぜ!?

あーもー!!あん時はすっげー嬉しかったぜ、マジでっ!!!

根性だけの「だけ」ってところはちょっと疑問だけどよ、

あの跡部に認められた感じっつーの?

他の分野じゃ全然勝ち目ねーけどさ、テニスでなら対等の立場に立てる。

あの跡部と同じ場所に立てる。

って気付いたんだよ、オレ。




それからだよなー。

オレが今まで以上に本気でテニスやり始めたのは。

いい意味でも、悪い意味でもさ。跡部はオレに影響を与えた奴なんだよ。

そんでもって・・・・・・





「おい、宍戸!!ぼけっとしてんなっ!!走りこみしろっ!!」


「い、言われなくても分かってるってんだよっ!!」


遠くから監視の目を光らせていた跡部がオレに渇を入れてきた。

ムッとして跡部を見れば、あの綺麗な顔で「ふふんっ」と鼻で笑う。

その跡部の仕草に、オレの胸がドキッと飛び跳ねた。



ちくしょう。いつか絶対お前にオレのことを完全に認めさせてやるんだからなっ。






アイツを見つめる度にドキドキしちまうのはー・・・・・・

まぁ、いいか。このことに関しては、また今度なっ。













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