キミに届くまで。



ボクは何万回でも伝えるよ。













『キミに届くまで』










「ドキンちゃん、ドキンちゃんっ!」


私の声に彼女は嫌そうなため息。

一回呼ぶだけじゃ。振り向かないんだ、私の愛しい女の子は。

彼女の部屋の入り口に立って、もう一度声をかける。


「ドキンちゃん、ドキンちゃん」


それでも彼女は振り向かない。


「ドキンちゃんてば。ねぇっ」


私もしつこく彼女の名前を呼ぶ。

根気比べなら負けないよ。

私の声、ちゃんと届いているのは知ってるんだから。


「ねぇ、ドキンちゃんっ」


「あーもー五月蝿いっ!!何なのよ、ホラーマンはっ!!」


ほら。

とうとうドキンちゃんが根を上げた。

今日も私の勝ち。

少し頬を赤くさせて、ドキンちゃんが振り返る。

今日もなんて可愛いんだろう、この女の子は。

ちょっと怒ってる。

その顔さえも愛らしくてたまらない。


「ドキンちゃんにプレゼントを持ってきたのです」


私はとびきりの笑顔を向けて、彼女の前に花束を差し出す。

ドキンちゃんは「チラリ」と花束に目をやって、それから私を見上げた。


「・・・・・何よ、これ」


「花束ですよ」


にこにこしている私の前で、ドキンちゃんが深くため息をつく。


「そんなの見たら分かるわよ。私が言いたいのは、なんで花束なのかってことよ」


どうやら急なプレゼントに対して違和感を感じている様子。

なんでって言われてもなぁ・・・・・

だって、そんなの・・・・・・


「プレゼントしたかったのですよ、ドキンちゃんに」


そう。

理由はそれだけ。

他に意味なんて無いんだ。

私の返事に、ドキンちゃんはまたしても深々とため息をつく。

ちょっと気恥ずかしそうにしているのは「喜んでくれている」ととっていいのかな?


「これ、私が育てたんですよ」


カラフルに咲き乱れる花。

私が毎日毎日せっせと世話をしたんだ。


「・・・・・それで?」


「あまりにも綺麗に咲いてくれたから・・・・それで・・・・・」


僕はにっこりとドキンちゃんに微笑んで


「ドキンちゃんにプレゼントしたくなったんです」


花束を受け取ったドキンちゃんは、ちょっと照れくさそうにしながら、


「・・・・・どーせなら、ケーキとかをプレゼントしなさいよね」


なんてちょっとした悪態をついてきた。

うーん。「ありがとう」とは、素直に言ってはくれないか・・・・。

ちょっと残念だな。

でも、本当は嬉しいんですよね、ドキンちゃん。

大丈夫。

私はちゃんと分かっているから。


「分かりました。次はケーキを持ってきます」


「・・・・いいわよ、別に」


「ふい」と顔を逸らして、私から受け取った花束を抱えたドキンちゃんは花瓶のところへ歩いていく。

花の甘い香りがドキンちゃんの部屋いっぱいに立ち込める。

花瓶に花を生ける彼女の後ろ姿をにこにこと眺めながら、私は優しく声をかけた。


「ねぇ、ドキンちゃん」


「・・・・・何よー」



「ドキンちゃんのことが大好きです」



彼女の動きが一瞬止まった。



「大好きなんです」



ねぇ、ドキンちゃん。

どのくらいキミに届いていますか?



「・・・・・その台詞はもう聞き飽きたわよ」


そう。

キミが呆れるぐらい、私はキミに伝えているから。


「分かってます。でも、言いたいんです」


彼女はまだ振り向かない。

でも平気。

私の方が粘り強いのは、キミだって知っているでしょう?


「ねぇ、ドキンちゃん。私はドキンちゃんが好きなんです」


「・・・・・私はしょくぱんまん様が好きなの」


その台詞だって、呆れるぐらいに聞かされた。


「知ってます。でも、言わせて下さい」


何百回だって。

何万回だって。

私はずっと言い続けるよ。

だって、私は知っているから。

私の気持ちが。

少しずつ少しずつ。

キミに届いているんだということを。


私はちゃーんと知っているんだから。



「それってメーワクって言うのよ?知ってる?」


彼女が振り返って私を見た。呆れたように笑いながら。

ほら。

やっぱりキミが根を上げた。

振り向かないはずのキミが、また私を見つめて笑ってる。

だから私もめげずに伝えられるんだ。

「大好きだよ」って。



「まぁ、でも・・・・・これは、ありがと」


素っ気無く言った彼女からのお礼の言葉。

私はそれだけで、天にも昇るような嬉しい気持ちになれるんだ。


「ドキンちゃんに喜んでもらえて嬉しいですっ」


本当だよ。嘘なんかじゃないよ?

「えへへ」と笑う私に、「やれやれ」とため息をついたドキンちゃんから


「その顔色も何とかしなさいよね」


なんて、手厳しい一言ももらってしまった。









ボクの想いがキミに届くまで



ボクはいくらだって頑張るよ

何度だって伝えるよ



根気比べなら



キミよりボクが強いんだから













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